ホルモンの影響について

こんにちは。植毛手術を検討しているうちに疑問に思うことが出てまいりましたので、お忙しいところ申し訳ありませんが質問させていただきます。
「側頭部から後頭部にかけての頭髪は、薄毛を誘発する男性ホルモンの影響を受けにくいように遺伝子的にプログラムされており、ほぼ生涯に渡って生え続ける性質を持っています。」とのことですが、これはどのように解釈すればよろしいのでしょうか?
 遺伝的なプログラムということは、毛根は胎内での身体形成の段階ですでにその性質が決まり、後天的に他のエリアに移されても、生まれ持った性質は変わらない、とりわけ特定のホルモンへの感受性は変わらないと考えればよろしいのでしょうか?
 一方、毛根はそれが現在どこのエリアに定着しているかによってその性質が決まるという説を以前どこかで読んだことがあり、多少混乱しております。それによれば、側頭部から後頭部は甲状腺ホルモンに支配されているエリアであり、そこにある毛根は常に甲状腺ホルモンにさらされているため、そこにある限り脱毛しないが、移植などで同ホルモンの支配エリアを外れ、たとえば男性ホルモンが支配的な前頭部や頭頂部へ移った場合、男性ホルモンの影響を新たに受けるようになり、その結果脱毛するようになるとのことでした。
 手術を受ける前に出来る限りの不安は取り除いておきたいと思っています。お返事お待ちしております。
 

加藤憲★

お返事

加藤憲★様へのお返事

ご質問ありがとうございます。
自毛植毛の髪が生涯生え続けること。体のほかのどの部位に植毛されても、もとの性質は変わらないで男性ホルモンに影響されない髪として生え続けること。既存の前頭部の髪が失われても、前頭部に移植して生えてきた髪は生涯生え続けること。などは自毛植毛の基本的な特徴です。

この詳細のメカニズムは、当院のホームページのトップページ「脱毛のメカニズム」の項目4〜5に詳しく説明してありますのでご参照下さい。

要するに、前頭部から頭頂部にかけて生えている髪は、もともと毛根に「5アルファ還元酵素のⅡ型」を持っていて、これに男性ホルモンのテストステロンが作用すると、テストステロンがDHTに変わり、このDHTが毛根周囲に蓄積すると髪がうぶ毛に変わる、というのが、薄毛の基本的な概略の仕組みです。側頭部から後頭部の髪は、もともと5アルファリダクターゼのⅡ型酵素をもっていないので、男性ホルモンが流れてきてもDHTを作らないから、うぶ毛にならないのです。頭全体にある髪は、一見同じ髪のように見えますが、実は2種類の別の髪なのです。そして、この2種類の髪は、きれいに分布が分かれて生えているのです。ですから、薄毛になるのは、前頭部から頭頂部にかけての範囲だけなのです。あとは個人差で、前から薄毛が進む人、後ろから薄毛なる人など、違いができますが、最終的には皆同じように、前頭部から頭頂部にかけての髪が薄毛になるのです。その場合でも、側頭部から後頭部にかけての髪は残ります。

人間は皆同じようになっています。白人、黒人、黄色人種、みな同じです。男性も女性も同じです。実に不思議ですね。あとは、人種差や、個人差で、多少の遅い早いの進行の差がでるだけです。

毛根の性質は、ほかのどの領域に移植されても、もとの性質は変わりません。これをドナードミナントといいます。たとえ既存の前頭部の髪がなくなっても、後頭部から移植された髪は、そこで生涯生えつづけます。どうぞご安心下さい。

医師 柳生

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